「スポーツライター志望」大学生の選択② ライターとして就職せずに、ライターを目指す女子大生【後編】

就活をIT業界に方向転向した理由は、フリーのライターとして生きる不安を解消できる可能性があると思ったからです。就活を始めた当初にライターを諦めたのは、ライターとしての成功するのはわずかであることを考えたとき、自分がそのわずかの中にいられる自信がなかったから、というのは前述の通りです。

最初からフリーでやっていくとしても、ライター業が軌道に乗るまでは副業もしないと人並みの生活はできません。ですが、数日で納品しないといけない仕事依頼が急に来ることもあるライター業のために、できるだけフレキシブルに働ける副業がいい。それが可能なのがSEです。

パソコンさえあればどこでも仕事できます。プログラミングは世界共通の「言語(Javaなど)」を用いる仕事なので、言語を使いこなせる技術さえあれば、世界中どこにいても仕事はできます。日本でなくても大丈夫です。

日本でなくても働けるというのが私にとっては大きな魅力で、実はひっそりと30歳くらいまでにヨーロッパ移住を計画してたりします。私は陸上以外に、ツール・ド・フランスなどのグランツールをはじめとするサイクルロードレースも好きなので、自転車競技の盛んなヨーロッパで自転車やサッカー観戦を楽しむ生活を送りつつ、ダイヤモンドリーグなどの海外レースをもっと日本で広めることはできないかと思っています。

まだ陸上の海外レースは有料チャンネルでしか放送されてなかったり、専門誌の発売を待たないとなかなか日本語での情報が入ってこなかったりするのが現状です。なので、「英語で海外メディアの記事を読むのが面倒くさい」という理由でリアルタイムの海外レース情報をスルーしてしまいがちな方でも、他の記事と同じように海外レースの情報を知ることができるようにできたらいいなと考えています。

ここで少し話が飛びますが、酒井さんに連絡を取るきっかけ、つまり私がスポーツライターを志すようになった理由を書きたいと思います。一言で言えば、「日本で陸上をもっとメジャーにしたい」からです。100m走はどんなに運動が嫌いな人でもやったことのある競技です。しかし、中学高校……と進むにつれてマイナー競技になっていきます。

サッカーW杯アジア最終予選やWBCの日本代表を10人言える人はそれなりにいると思いますが、リオ五輪の陸上日本代表を男女問わず10人言える人はどれくらいいるでしょうか?陸上の代表で名前が挙がった選手の数は恐らくサッカーや野球の半分もいないと思います。なぜでしょうか。

この答えについては、答えは1つではないし長くなるので割愛しますが、1つに陸上業界の発信力が弱いことがあるのではないかと考えています。「需要がないから発信してもメディアは儲からない。だから有料チャンネルでしか放送しないし、ネットニュースの扱いも小さくする」と言われたら、現状ではなかなか反論できません。ですが、発信力を強めることで需要を作り出すことができれば、何か変わるんじゃないか、変えられるんじゃないか。

「メディアでの陸上競技の取り上げられ方を見て思うところがあり、個人のブログやTwitterなどではなくライターとしての肩書を持つことで、より多くの人に自分の言葉で陸上のことを伝えたいと思うようになりました。専門誌のような、その競技が好きな人しか見ないようなものというよりは、より多くの人に陸上を知ってもらいたいんです」

そう思った大学3年生になったばかりの私は、2年前の4月、意を決して酒井さんに連絡しました(その時のメールが残っていたので、当時の自分の言葉を借りました)。

私が海外でのライター生活を考えている理由は他にもありますが、想定以上の長文になってしまったので、今回はきっかけまでにします。もし第2弾を執筆する機会をいただけたら、その時に書きたいと思います。恐らく一生に一度になるであろう自国開催の五輪には、どんなに小さな記事だとしてもライターとして関わりたいと思っています。そのためにも、これからはSEの仕事を精一杯こなして、今度こそ怖気づくことなくスポーツライターの世界に飛び込みたいと思います。

●ENOKI 1993年生まれ、東京都出身。中学時代は陸上部、高校時代は硬式野球部に所属。基本的に見るのもやるのも個人競技派。20代のうちにダイヤモンドリーグとグランツールをそれぞれ1つでも現地観戦するのが夢。