箱根駅伝から〝世界〟へ飛び立った選手たち

3年目ライターのMATSUです。1月は全日本実業団駅伝(ニューイヤー駅伝)、箱根駅伝、都道府県対抗駅伝(男女)と見ごたえのある大会が続き、駅伝ファンは大いに盛り上がったのではないでしょうか。

箱根駅伝は東洋大が下級生主体の若いチームながら4年ぶりの往路優勝を遂げ、復路では王者・青学大が圧巻の継走で逆転優勝。見事大会4連覇の偉業を達成しました。両チームとも3年生以下の選手が複数区間賞を獲得しており、次回もこの2校によって優勝争いが展開されるのではと期待しております。

さて話は変わりますが、「箱根駅伝がマラソンをダメにした」という意見を今でも目にすることがあります。確かに日本の男子マラソンは2013年モスクワ世界選手権の中本健太郎(安川電機/5位)を最後に入賞から遠ざかっており、オリンピックに関しては04年のアテネ大会以来入賞者が出ていません。
(※メダル獲得は、世界選手権は2005年ヘルシンキ大会の尾方剛、オリンピックは1992年バルセロナ大会の森下広一が最後)

日本記録も2002年の高岡寿成(2時間6分16秒)以来更新されておらず、どんどん世界との差は広がる一方です。それだけを見れば確かに日本のマラソンは弱くなったと言えるかもしれませんが、「箱根駅伝が」というのはどうしても納得ができません。すべてを箱根駅伝のせいにするのは短絡的ではないかと筆者は思うわけです。

<近年の五輪、世界選手権のマラソン代表の出身校と箱根駅伝成績>

●2008年 北京五輪
13位 尾方剛(中国電力)・・・山梨学大
第70回大会 10区 [区間1位] 1時間04分58秒

76位 佐藤敦之(中国電力)・・・早大
第74回大会 1区 [区間3位] 1時間03分02秒
第75回大会 4区 [区間4位] 1時間03分47秒
第76回大会 2区 [区間4位] 1時間09分04秒

棄権 大崎悟史(NTT西日本)・・・山梨学大
第74回大会 10区 [区間1位] 1時間05分11秒
第75回大会 10区 [区間2位] 1時間12分24秒

●2009年 ベルリン世界選手権
6位 佐藤敦之(中国電力)・・・早大
上記参照

11位 清水将也(旭化成)・・・日大
第76回大会 3区 [区間12位] 1時間05分46秒
第77回大会 4区 [区間9位] 1時間09分08秒
第78回大会 4区 [区間2位] 1時間03分30秒
第79回大会 2区 [区間5位] 1時間08分50秒

14位 入船敏(カネボウ)・・・鹿児島商高

39位 前田和浩(九電工)・・・白石高(佐賀)

61位 藤原新(JR東日本)・・・拓大
第77回大会 1区 [区間10位] 1時間04分03秒
第79回大会 4区 [区間4位] 1時間03分30秒

●2011年 テグ世界選手権
6位 堀端宏行(旭化成)・・・八代東高(熊本)

9位 中本健太郎(安川電機)・・・拓大
第81回大会 7区 [区間16位] 1時間07分24秒

17位 川内優輝(埼玉県庁)・・・学習院大
第83回大会 6区 [区間6位] 1時間00分24秒
第85回大会 6区 [区間3位] 59分27秒

28位 尾田賢典(トヨタ自動車)・・・関東学院大
第76回大会 2区 [区間15位] 1時間12分37秒
第78回大会 1区 [区間5位] 1時間04分29秒
第79回大会 2区 [区間8位] 1時間09分10秒

37位 北岡幸浩(NTN)・・・東洋大
第79回大会 4区 [区間6位] 1時間03分31秒
第81回大会 2区 [区間8位] 1時間09分25秒

●2012年 ロンドン五輪
6位 中本健太郎(安川電機)・・・拓大
上記参照

40位 山本亮(佐川急便)・・・中大
第80回大会 8区 [区間11位] 1時間07分47秒
第82回大会 8区 [区間15位] 1時間07分51秒
第83回大会 5区 [区間3位] 1時間20分55秒

45位 藤原新(ミキハウス)・・・拓大
上記参照

●2013年 モスクワ世界選手権
5位 中本健太郎(安川電機)・・・拓大
上記参照

14位 藤原正和(Honda)・・・中大
第76回大会 5区 [区間1位] 1時間11分36秒
第77回大会 5区 [区間2位] 1時間13分51秒
第78回大会 5区 [区間3位] 1時間14分36秒
第79回大会 2区 [区間1位] 1時間07分31秒

17位 前田和浩(九電工)・・・白石高(佐賀)

18位 川内優輝(埼玉県庁)・・・学習院大
上記参照

途中棄権 堀端宏行(旭化成)・・・八代東高(熊本)

●2015年 北京世界選手権
21位 藤原正和(Honda)・・・中大
上記参照

40位 前田和浩(九電工)・・・白石高(佐賀)

※出場辞退 今井正人(トヨタ自動車九州)・・・順大
第80回大会 2区 [区間10位] 1時間10分10秒
第81回大会 5区 [区間1位] 1時間09分12秒
第82回大会 5区 [区間1位] 1時間18分30秒
第83回大会 5区 [区間1位] 1時間18分05秒

●2016年 リオ五輪
16位 佐々木悟(旭化成)・・・大東大
第81回大会 5区 [区間6位] 1時間13分48秒
第82回大会 5区 [区間6位] 1時間21分45秒
第83回大会 5区 [区間6位] 1時間21分48秒
第84回大会 2区 [区間10位] 1時間09分41秒

36位 石川末廣(Honda)・・・東洋大
第75回大会 2区 [区間14位] 1時間12分37秒
第76回大会 9区 [区間15位] 1時間19分13秒

96位 北島寿典(安川電機)・・・東洋大
第82回大会 4区 [区間8位] 56分21秒
第83回大会 8区 [区間1位] 1時間06分28秒

●2017年 ロンドン世界選手権
9位 中本健太郎(安川電機)・・・拓大
上記参照

10位 川内優輝(埼玉県庁)・・・学習院大
上記参照

26位 井上大仁(MHPS)・・・山梨学大
第88回大会 1区 [区間10位] 1時間03分13秒
第89回大会 3区 [区間7位] 1時間06分40秒
第90回大会 5区 [※参考] 1時間21分11秒
第91回大会 3区 [区間3位] 1時間02分56秒
※チーム途中棄権により参考記録

上の表は、2008年から17年までのオリンピック、世界選手権の男子マラソン代表の一覧です。合計19人が選出され、そのうち16人が関東の大学を卒業して箱根駅伝を1度は経験しているということがわかりました。

かつては龍谷大を卒業した高岡寿成のように、関東以外の大学からでも世界へ飛び出す選手は存在しました。しかし至近10年間は関東以外の大学から1人もマラソン代表を輩出しておらず、高卒の選手もわずか3名。したがって、「箱根駅伝がマラソンをダメにした」というのは見当違いで、世界の舞台で活躍できないというのは別の問題にあるのではないでしょうか。

ちなみに、〝世界〟というのはオリンピックや世界陸上のマラソンだけとは限りません。5000mや10000mなどトラック種目でも多くの箱根ランナーが代表に選出されていますし、さらに陸上以外の競技でも、活躍しているアスリートは多数存在します。

以下の2人は箱根駅伝を走った後に他競技へ活躍の場を移し、〝世界〟に進出した代表例です。

・荒木宏太(トレイルランナー)・・・山梨学大
第83回大会 4区 [区間12位] 57分43秒
→2017年トレイル世界選手権出場(40位)

・板垣辰矢(ウルトラランナー)・・・帝京大
第85回大会 6区 [区間2位] 59分23秒
第86回大会 6区 [区間4位] 1時間00分23秒
→IAU100km世界選手権出場(2015年11位、2016年54位)
※自己ベスト6時間14分18秒は世界歴代2位

この他にも、トライアスロンや車いすマラソンなど、他競技で世界を目指すアスリートは多数存在します。箱根駅伝はメディアの注目度も高く、中高生にとっては憧れの大会です。選手のモチベーションアップにもつながりますし、長距離界全体の底上げに大きく寄与しているようにも思えます。

とはいえ、やはり世界の場で活躍できないのは寂しい限り。ぜひ「マラソン大国ニッポン」のお家芸復活を期待したいところです。

MATSUの前回投稿(毎月25日)

●MATSU 1991年生まれ、東京都出身。スポーツ専門誌の編集部でアルバイトをしながら、スポーツライターの道を模索中。中学・高校は陸上部で5000mの自己ベストは15分43秒67。大学はラクロス部