速くても勝てなければ意味がない? メイウェザー、藤井四段に学ぶ〝負けない美学〟

公開日: : 最終更新日:2017/09/26 MATSU, スポーツ, 陸上競技

3年目ライターのMATSUです。陸上ファンなら知っている人も多いかと思いますが、9月に入ってから日本陸上界は〝好記録ラッシュ〟に沸いています。

まず世間を賑わせた男子100mの9秒98(桐生祥秀、東洋大)に始まり、昨日行われた全日本実業団対抗選手権では、ロンドン世界陸上に出場できなかった山縣亮太(セイコー)が10秒00(+0.2)の日本歴代2位タイをマーク。その他の種目でも男子ハーフマラソンの設楽悠太(Honda/1時間0分17秒)、そして今季すでに2度も日本記録を更新している男子円盤投の堤雄司(群馬綜合ガードシステム/60m74)が、それぞれ日本新を打ち立てました。さらに中学陸上界でも、男子1500mの中学記録保持者・石田洸介(浅川中・福岡)が前人未到の「3分50秒切り」となる3分49秒72を記録するなど、勢いが止まりません。

しかし水を差すようですが、陸上は記録だけがすべてではありません。勝負の世界においては、〝勝つ〟ことも同じくらい求められるのではないでしょうか。そういう意味では、日本選手権4連覇中の堤選手や中学生の石田選手を除き、桐生、山縣、設楽の3選手は一度も日本選手権で〝連覇〟を経験していません(設楽選手は優勝未経験)。ライバルとの実力が拮抗しているという見方もできるかもしれませんが、それでも江里口匡史(男子100m)、佐藤悠基(男子10000m)などはそれぞれ同大会4連覇を果たしており、やはり勝つべき選手は長きにわたり本番で力を発揮しているのです。

スポーツ界では、一瞬の強さとは別に、〝負けない美学〟というものが存在します。最も有名なものとしては、ボクシングのフロイド・メイウェザー・ジュニアの50戦無敗記録(更新中)。他にも今年1月に、スペインサッカーのレアル・マドリードが40戦無敗の国内新記録を打ち立てたことは記憶に新しいでしょう。

〝連勝〟という観点でいえば、近々の話題だとMLBのクリーブランド・インディアンスがリーグ戦22連勝を達成し、引き分けを挟まない記録としては史上初の快挙を成し遂げました。将棋界でも14歳の藤井聡太四段が29連勝の新記録を果たすなど、「勝ち続ける」「負けない」という強さを披露したのです。

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■各競技における「スポーツ無敗(連勝)記録」一覧
<野球>
・田中将大(投手) 43戦(34勝1S)※2012~14年(NPB、MLB合算)
・南海ホークス(1954年)、毎日大映オリオンズ(1960年) リーグ戦18連勝(※大毎は1引き分けを挟んでいるため19戦無敗)
・読売ジャイアンツ 日本シリーズ9連覇(1965~73年)
<サッカー>
・INAC神戸レオネッサ 43戦(37勝6分け/2010~12年)
<陸上>
・エドウィン・モーゼス(米国、男子400mH) 122連勝(1977~87年)
・室伏広治(男子ハンマー投) 日本選手権20連覇(1995~2014年)
<レスリング>
・吉田沙保里 個人戦206連勝(五輪・世界選手権16連覇)
<柔道>
・山下泰裕 203戦無敗(196勝7分け)のまま引退
<大相撲>
・双葉山 69連勝(1936~38年)
・白鵬 63連勝(現行15日制では最多/2010年)
・朝青龍 7場所連続優勝(2004年11月~2005年11月)

再び陸上に話を戻しますが、日本の男子短距離種目のレベルは過去最高潮といえます。昨年のリオ五輪、今年のロンドン世界陸上での4×100mリレー連続メダルや、日本人初の9秒台、18歳・サニブラウン・アブデル・ハキームの世界陸上200m決勝進出など、かつてない偉業が続出しました。

しかし、実は日本選手権において、男子100mでは2013年以降、同200mでは2010年以降で〝連覇者〟が1人も誕生していません。高いレベルで拮抗しているのも事実ですが、連覇を果たしてこそ、本当に強い選手と言えるのではないでしょうか。

勝ち続けるには、大会に本調子をもっていく「ピーキング能力」と、本番での「集中力」、ケガをしない「頑丈な身体」が必要になります。日本男子短距離チームの実力は確実に世界トップレベルへと駆け上がったと思うので、それを牽引する〝本物〟の強い選手、「エース」の誕生に期待したいところです。
(文中敬称略)

■陸上競技 近年の主な日本選手権連覇者
20連覇 男子ハンマー投 室伏広治(1995~2014年)
12連覇 男子やり投 村上幸史(2000~11年)
11連覇 男子400m 金丸祐三(2005~15年)
10連覇 女子円盤投 室伏由佳(2002~11年)
9連覇 女子七種競技 中田有紀(2002~10年)
8連覇 女子400mH 久保倉里美 (2007~14年)
7連覇 男子50㎞W 山﨑勇喜(2004~10年)
7連覇 女子100m 福島千里(2010~16年)
6連覇 男子砲丸投 畑瀨聡(2012~17年)※連覇中
6連覇 男子十種競技 右代啓祐(2010~15年)
6連覇 女子200m 福島千里(2011~16年)
6連覇 女子10000m 福士加代子(2002~07年)
6連覇 女子三段跳 吉田文代(2005~10年)
5連覇 男子800m 川元奨(2013~17年)※連覇中
5連覇 男子400mH 為末大(2001~05年)
5連覇 女子200m 信岡沙希重(2004~08年)
5連覇 女子1500m 吉川美香(2006~10年)
5連覇 女子ハンマー投 綾真澄(2011~15年)

MATSUの前回投稿(毎月25日)

●MATSU 1991年生まれ、東京都出身。スポーツ専門誌の編集部でアルバイトをしながら、スポーツライターの道を模索中。中学・高校は陸上部で5000mの自己ベストは15分43秒67。大学はラクロス部。

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