高速化した東京マラソンで露呈した日本の致命的な弱点

東京の風物詩となった都庁からのスタートシーンだが、今回は〝初速度〟が違っていた。3万5千人を超えるランナーたちの先頭を、アフリカ勢が圧巻のスピードで駆け抜けていく。ベルリンやロンドンなどで見られていた光景がTOKYOでも繰り広げられた。

ファーストペースメーカーは5km1415秒、10km2850秒という世界記録(2時間2分57秒)を上回るスピードで飛ばしていく。中間点の通過は1時間1分22秒。「世界記録を狙う」と宣言していたウィルソン・キプサング(ケニア)は悠々とレースを進めていた。

トップ集団のなかに日本勢の姿はない。有力選手の大半は〝日本人向け〟ともいうべき、「2時間7分前後」に設定されたサードペースメーカーの後ろを走っていた。中間点の通過は1時間3分39秒。この地点でキプサングに2分17秒もの大差をつけられた。

先頭は30km(1時間2747秒)まで世界記録を上回るペース。キプサングは終盤に少しペースダウンして世界記録を逃すも、世界歴代12番目のパフォーマンスとなる2時間3分58秒でゴールテープに飛び込んだ。日本国内最高記録(2時間5分18秒)を大幅に塗り替えるレースはまさに〝世界最高クラス〟の走りだった。

一方の日本勢は井上大仁(MHPS)の2時間8分22秒(8位)が最高で、山本浩之(コニカミノルタ)、設楽悠太(Honda)、服部勇馬(トヨタ自動車)の3人が2時間9分台でフィニッシュした。井上はサードペースメーカーにつかず、10km2913秒で突っ込んだ後、自分のペースに切り替えた。そして、先行していた設楽を38km付近で逆転。2度目のマラソンで、日本人トップに輝いた。攻めの走りと冷静な判断。終盤の粘りに勝負強さ。そのレース運びは十分に評価できるものだろう。しかし、世界と比較すると、やはり物足りない。

東京マラソンのメディアガイドには、2006年以降の「ワールドマラソンメジャーズ歴代トップ50」の記録が掲載されている。その一番上はデニス・キメット(ケニア)がベルリンで刻んだ「世界記録」の2時間2分57秒。で、一番下に記されているタイムが2時間5分52秒だ。今回、井上がマークした2時間8分22秒は、世界的にはほとんど評価されないタイムといえるだろう。

優勝したキプサングと井上のタイム差は4分24秒。これが世界と日本の〝実力差〟だ。東京マラソンは今回からコースがリニューアル。ランナーたちを苦しめた佃大橋など、臨海部における橋、坂、風を避けたレイアウトになり、「高速コース」として生まれ変わった。前回までは日本人選手に合わせたようなペース設定だったが、今回は世界記録を目指したように、「グローバル・スタンダード」ともいうべきレースディレクションに方向転換した。

その結果、日本勢は誰もトップ集団についていくことができなかった。

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