22歳のシンデレラ・一山麻緒、その魅力と可能性

東京五輪の女子マラソン代表。3月8日の名古屋ウィメンズマラソンで〝ガラスの靴〟に滑り込んだシンデレラが22歳の一山麻緒(ワコール)だ。

最後の1枠を獲得するには、1月の大阪国際女子マラソンで松田瑞生(ダイハツ)がマークした日本歴代6位(当時)の「2時間21分47秒」を上回らないといけなかった。しかも、スタート時の天候は雨、気温8.4度。レースが進むごとに気温が下がる難しいコンディションのなかで〝新たな才能〟がキラリと光った。

トップ集団はキロ3分20秒ペース(2時間20分39秒ペース)で進むが、25km以降はペースメーカーの動きが鈍る。29km手前でワコール・永山忠幸監督から「いつでも行っていいよ!」と声がかかると、一山が驚異的な高速ラップを刻んだ。

29~32kmをキロ3分14秒ペースに引き上げて、32~33kmはキロ3分10秒までスピードアップ。自己ベスト2時間20分39秒のピュアリティー・リオノリパ(ケニア)と同2時間21分01秒のヘレン・トラ(エチオピア)を突き放した。

30kmの通過タイムは大阪国際の松田から40秒遅れていた。しかし、一山は35kmまでの5kmを16分14秒で走破すると、40kmまでの5kmも16分31秒でカバー。冷雨のなかを爆走して、東京五輪への道を突き進んだ。

一山は2位以下を2分以上も引き離して、2時間20分29秒の大会新でフィニッシュ。日本人国内最高記録(2時間21分18秒)を17年ぶりに更新すると、日本歴代記録でも野口みずき、渋井陽子、高橋尚子に次ぐ4位にランクインした。

瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「前半よりも後半の方が23秒速い。驚きでした。この走りをすれば、世界でも通用するんじゃないかと思っています。東京五輪が楽しみですし、日本記録を狙う一番手だと思っています」と一山の走りと今後の可能性を高く評価した。

女子マラソンの日本記録は野口みずきが2005年のベルリンで打ち立てた2時間19分12秒。男子マラソンは2017年以降に日本記録が3回も塗り替えられた一方で、女子は伸び悩んだ。しかし、今年に入り、潮目が変わり始めている。1月に新谷仁美(積水化学)がハーフマラソンで1時間6分38秒の日本記録を樹立すると、2月の青梅マラソン(30km)で前田穂南(天満屋)が1時間38分35秒の日本最高をマークした。

「女子マラソン界は今どんどん(記録を)変えていかなくちゃいけない。私たちがやりたいという思いを素直に練習にぶつけてきたんです」と永山監督。松田の2時間21分47秒ではなく、「2時間21分を切って、野口みずきさんの日本人国内最高記録(2時間21分18秒)を動かしたい」と考えた永山監督は、米国・アルバカーキ合宿(2月4~29日)で一山に〝鬼練習〟を課してきた。

続きは『VICTORY』で