京大卒の山西 20km競歩で初の金メダルも笑顔なき理由

ドーハ世界陸上で日本勢にとって今大会、2度目の歓喜が広がった。男子50km競歩の鈴木雄介(富士通)に続き、男子20km競歩で山西利和(愛知製鋼)が金メダルに輝いたのだ。

スタート時の気温32.9度、湿度80.5%。23時30分、52名のウォーカーが暗闇に照らされた特設コースに飛び出していった。高温多湿の条件で、5km通過は22分26秒というスローペースになった。レースが動いたのは6km過ぎ。2年前のロンドン世界陸上で7位に入っている王凱華が飛び出すと、山西が追いかける。7.3kmで王をかわして山西がトップを奪った。王は黄色の警告カードを立て続けに出されたこともあり、ペースを落とした。その間に山西が後続との差を広げていく。この〝決断〟が勝負をわけた。

「王凱華を追いかけたときに誰もついて来なかった。ここでペースを落として、集団に追いつかれると僕はただ体力を消耗しただけになる。このまま(ひとりで)行くのか。ペースを落として集団のなかで力をため直すか。そこを天秤にかけました」

山西が王を追いかけた場面。トップに立って、そのまま逃げ切るというイメージは持っていなかったという。

「まさか誰も来ないとは思いませんでした。あの段階で僕が前に出ることで、集団全体のペースが上がる。そうすれば、サバイバルレースになってきます。それが狙いでした。ただのラスト勝負だとスピードのある選手には敵わない。僕の良さを生かすためにはある程度、削れた状態でラスト勝負に持ち込む必要があると思っていたんです」

昨夏のジャカルタ・アジア大会で山西は王とのラスト勝負で敗れた悔しい過去がある。残り500mからのペースアップで6秒差をつけられた。山西は京大卒のインテリ選手。瞬時の〝計算〟で、自分の持ち味であるスピード持久力を生かすべく、キロ4分30秒前後のペースからキロ4分15秒まで引き上げた。10km通過は44分06秒で2位集団に17秒のリードを奪った。王の飛び出しを利用したアタックに見えたが、本人は否定する。

「どんなレースになっても、途中の3kmはキロ4分ぐらいのペースまで引き上げて、集団を削るつもりでいました。そこは単独になってもブレずにやっていこうかなと思っていたんです」

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