駅伝「四つんばい」を美談に仕立てたテレビ中継に異議あり!

10月21日に開催されたプリンセス駅伝の「四つんばい」スパートが賛否の議論になっている。筆者は正直、こんな〝問題〟に世間がヒートアップしていることに少しあきれている。なぜなら、今回の駅伝についての「本質」をわかっていない人が多いからだ。この件にはいくつもの〝問題〟が絡んでいる。ひとつずつ「整理」して考えていきたい。

まずは選手の立場からだ。2区(3.6km)に出走した岩谷産業の飯田怜選手は入社1年目の19歳。高校時代は全国大会で華々しく活躍した実績はなく、テレビ中継されるようなレースでかなり緊張したことが予想される。そして中継所まで約250mというところで転倒。思わぬアクシデントでパニックになったことが考えられる。

その後は、脚の痛みから、両手と両膝をついてアスファルトの上を進んだ。駅伝を走る場合、まず頭に浮かぶのが「次走者」のことだ。張ってでもタスキをつなげるのは、駅伝ランナーの〝本能〟ともいえる。その行為について、良かったとも悪かったとも思わないし、彼女の頑張りを見て、感動するのは自由だ。しかし、飯田選手は中継所に入るのが遅れ、前走者のタスキを数秒遅れて受け取っている。1秒を争う駅伝選手として、致命的なミスを犯したことを考えると、個人的には褒められない。

選手としての判断でいうと、残り約250mとはいえ、両膝を擦りむいてでも進むということが「正しい選択」だったのかも疑問が残る。ちょっと昔の話になるが、日清食品グループに所属する佐藤悠基選手は東海大1年時に出場した全日本大学駅伝予選会(1万mレース)で驚くべき行動をとった。左足甲が「ちょっと気になった」という理由でレースをやめたのだ。残りはトラック2周。歩いてでもゴールできない状況ではなかったが、彼はそうしなかった。自分の脚を優先させたのだ。チームは全日本大学駅伝の出場を逃したものの、佐藤選手は3週間後の日本インカレ1万mで1年生Vを達成。その後も躍進を続けて、世界選手権やオリンピックにも出場した。もし、あのとき無理をしていたら、その後の活躍はなかったかもしれない。

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