日体大のパワハラ問題。選手たちのケアはできているのか!?

日本インカレ開催中の9月7日に発売された『FRIDAY』の記事が発端で、9月10日から怒涛の日々を過ごした。日体大・渡辺正昭駅伝監督の「パワハラ問題」だ。8つのテレビ番組から出演の問い合わせがきて、そのうち4番組に出演した。

しかし、この騒動は1週間でピタリとおさまった。ワイドショーが騒がなくなった理由はひとつ。〝ネタ〟がなくなったからだ。

どの番組も実際にパワハラや暴行を受けた選手やOBを必死に探していたが、取材を受けてもいいという該当者は見つからなかった。某番組のスタッフは夏合宿中だった選手に接触したものの、箝口令が敷かれていたようで、コメントすら拾うことができなかったという。

テレビ出演してわかったのは、どの番組も報じたい〝方向性〟があるということだ。たとえばAという番組では「渡辺監督が良い指導者であるということは、ここではあまり言わないでください」とお願いされた。反対にBという番組では「パワハラはいけないことだけど、渡辺監督はこんな良い面もあることを伝えたい」というニュアンスだった。そして、基本、司会者に振られたときにしか発言できないため、生放送といえども、テレビ番組で自分の〝本当の意見〟をコメントすることは難しい。

渡辺元監督は9月11日付で解任された。世間的にはひと段落という状態ではあるが、今回の件で、どうしても言いたいことがある。それは「大学の責任問題」と「選手たちのケア」についてだ。

そもそも渡辺氏は愛知・豊川工高で部員への体罰を繰り返したとして2013年に懲戒処分を受けている。そんな人物が名門校の監督にふさわしいとは思えないし、2013年の箱根駅伝で30年ぶりの総合優勝に輝いたにも関わらず、監督がわずか2年で交代したことも違和感があった。

渡辺氏が母校の駅伝監督に就任したとき、大学側は「(体罰問題は)十分に反省し再発の恐れがない」と説明している。しかし、就任1年目の夏にエースが部を離れるなど、明らかな異変がありながら、大学側の対応は杜撰だった。渡辺氏を駅伝監督に抜擢しておいて、部内の騒動に対してリサーチもしない。そして、渡辺氏は再び、パワハラや暴行を起こしている。今回の事件は大学側に大きな責任があるといえるだろう。

もうひとついうと、渡辺監督の指導法は選手だった日体大時代に培われた部分が大きいと思う。そう考えると、日体大という組織が、今回のパワハラ・暴行の元凶になっていたといえるが、多くのメディアは渡辺氏を〝集中攻撃〟するだけだった。

そして、一番心配しなければいけないのは選手たちだ。渡辺氏により、夢を奪われた元部員にどんなケアをするのか。今回の報道で、ともに汗を流してきた仲間たちとの友情にヒビが入ったかもしれない。彼らが大学を卒業した後も、笑顔で再会することができるのか。すべてを水に流すのは難しいのかもしれないが、大学側が間に入ってサポートできることがあるはずだ。

「アスリート・ファースト」。こういう事態が起きたときこそ、大人たちは選手のことを一番に考えるべきだろう。まもなく学生駅伝が始まる。日体大の選手たちには悔いの残らないシーズンを送っていただきたいと思う。こんなにキラキラと輝く青春時代は二度とやってこないのだから。