張本氏の「走り込みが足らない」は本当か?

日本スポーツ界にはびこる〝努力〟のかたちは間違っている

米メジャーリーグで投手と打者の二刀流で大活躍を続けてきた大谷翔平(ロサンゼルス・エンゼルス)が6月上旬、右ひじの不調により故障者リスト入りした。そんな大谷に対して、野球解説者の張本勲は「サンデーモーニング」(TBS系)のスポーツコーナー「週刊御意見番」で、以前から「喝!」を入れていた。

例えば、こうだ。4月28日の試合で内野ゴロを打った大谷が一塁ベースに駆け込んだ際、ベースの角を踏んで左足首を捻挫した。この件について、張本は番組内で、「練習不足なんですよ。走り込んでいないから。走り込まないと、これからもっと(ケガが)出ますよ」とコメントしていた。

こうした張本の「喝!」が的中したのだろうか。大谷は6月6日のカンザスシティ・ロイヤルズ戦に投手として出場した際、右ひじの張りを訴え、病院で検査した結果、損傷の程度は3段階のうち中程度の「グレード2」との診断を受けた。故障者リストに入り、3週間はボールを投げずに調整するという。再検査を受けてから今後の方針を決めるため、靭帯再建手術(通称トミー・ジョン手術)の可能性もあると報じられている。

はたして投手に「走り込み」は必要なのか。日本スポーツ界の伝統的な「努力のかたち」の是非について考えてみたい。

筆者は、投手が「走り込む」ことに以前から違和感を抱いていた。その理由は、投手が「ボールを投げる」という動きと、「走る」という動きはまったく違うからだ。

ピッチングの下半身の動きは筋トレの「ランジ」(立った状態で片足を前に出して着地と同時に、上体を落として下半身に負荷をかける)に近い。一方、走るときには、下半身を深く沈みこませるような動きはしない。どんなに走り込んだところで、投手に必要な「下半身の筋力」が効率的に強化できることはないだろう。

「投手=走り込みが大切」という図式が成り立つなら、マラソンランナーは良い投手になれるはずだ。しかしながら、長距離ランナーは、瞬発的なパワーを発揮するのが得意ではない。その一方で、投手の動きに似ているやり投げの選手には、時速140kmを超えるようなボールを投げる者もいる。「走り込み」という言葉には違和感しかない。

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