長距離ランナー〝東京五輪世代〟の甘くない現実

高校スポーツ界には年間にいくつものビッグイベントがある。春・夏の甲子園(野球)、選手権(サッカー)、都大路(駅伝)、花園(ラグビー)、ウインターカップ(バスケ)、春高バレー……。憧れの舞台を経験した者は、ひとつの夢をかなえたと言ってもいい。その中でも有望な選手は次のステージに進むことになる。

野球でいえば、毎年100名前後が日本高校野球連盟に「プロ野球志望届」を提出する。日本野球機構(NPB)のドラフト会議では30~40名ほどの高校球児が指名を受けることになる。高校からいきなりプロに進み、スーパースターの道を突き進む選手がいる一方で、ドラフト指名で入団したのに一度も1軍に登録されることなく、ひっそりとグラウンドを去る選手もいる。そうした「格差」は、どの競技にも共通する甘くない現実だ。

2007年、高校3年「トップ10」のうち今も実業団で走っているのは1人

今回、10年前に高校3年生の5000メートル走で、当時トップ10だった選手たちの「今」をクローズアップしてみたい。彼らは現在、28~29歳で、2020年の東京五輪が集大成ともいうべき世代。特に注目されているのは、この世代の選手が「マラソン」で活躍できるかどうかだ。

下記のリストはトップ10選手の「タイム」「名前」「高校」「その後の進路」である。

【2007年 高校3年生5000mタイムのトップ10】
① 14分00秒8  鎧坂哲哉(広島・世羅)→明治大
② 14分01秒50 柏原竜二(福島・いわき総合)→東洋大
③ 14分04秒25 八木勇樹(兵庫・西脇工)→早稲田大
④ 14分07秒56 矢澤曜(東京・多摩)→早稲田大
⑤ 14分09秒80 伊藤正樹(秋田・秋田工)→国士館大
⑥ 14分11秒45 三田裕介(愛知・豊川工)→早稲田大
⑦ 14分12秒11 松原健太(島根・出雲工)→東京農業大
⑧ 14分12秒55 中山卓也(兵庫・須磨学園)→早稲田大
⑧ 14分12秒55 奈良眞太郎(宮城・東北)→日本体育大
⑩ 14分13秒19 刀祢健太郎(山口・西京)→東海大

【鎧坂哲哉(1位)】この「トップ10」の中で大学卒業後も際立った活躍をしているのは、1位のタイムを出した鎧坂哲哉(現・旭化成)だ。明治大では1万mで日本人学生最高(当時)の27分44秒30をマークすると、社会人では2015年の北京世界選手権1万mに出場。5000m(13分12秒63)と1万m(27分29秒74)で日本歴代2位のタイムを持ち、ニューイヤー駅伝(全日本実業団駅伝)では連覇(17・18年)も経験している。

【柏原竜二(2位)】箱根駅伝ファンならば、真っ先に目がいくのが「山の神」と呼ばれた柏原竜二だろう。箱根駅伝は5区で4年連続の区間賞を獲得し、チームに3度の総合優勝をもたらした。また関東インカレ1万mで4年連続して表彰台に乗るなど、トラック競技でも活躍した。しかし、富士通に入社後は故障もあり、2017年3月末で陸上部を退部。その後は同社の社員として働いており、現在は同社アメリカンフットボール部「富士通フロンティアーズ」のマネージャーを務めている。当時の5000mのタイムでは2位につけた柏原だが、高校3年の12月の記録会でマークしたもので、高3の秋までは全国的にまったく無名の存在だった。

【早大進学組4人(3、4、6、8位)】一方、この世代で当時「最強」と呼ばれていたのが、インターハイ5000mで2年連続の日本人トップに輝いた八木勇樹(3位)だ。

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